ウェブプレスの安マンとスタッフが、チラシ印刷やタブロイド新聞印刷などの、印刷に関する事から、デザインやデータ作成、商品の始まりや用語の語源など、色々な事を書き綴っています。
テーマ:実際に作るチラシ講座〜デザインのコツと実例〜
【03】工場の求人チラシを作ろう!
このシリーズでは、さまざまな業種や目的に応じたチラシや印刷物の作成をテーマに、実際の制作工程とポイントを解説していきます。
チラシなどの印刷物は、デザインやレイアウト次第で伝わりやすさが大きく変わります。
どのようにして見やすく、魅力的なチラシを作るのか、一緒にチェックしていきましょう。
第3回となる今回は「工場の求人チラシ」を作成します。
インプット情報を確認する
まずは、どのようなチラシを作成するのか確認しましょう。
チラシ作成に必要な情報を整理しました。お客様から提供される原稿は、だいたいこのような内容になるかと思います。
(内容は架空のものです)
「伝えたいこと」や「チラシの雰囲気」が明確なのは大変ありがたいですね。
その他も、原稿がしっかり作られているようです。
原稿の情報をベースに、足りないものがあれば補足します。何が足りないか、付け加えて問題ないか、制作する前に確認しましょう。
また「気軽に応募してほしい」という明確な意志がありますので、そのために何か提案ができないか考えましょう。
【確認と提案】
勤務するにあたって、雇用者が用意するものはありますか?
→ありません、すべて会社で用意します。
WebフォームのQRコードを掲載しますか?またパラメータはつけますか?
→掲載してください。このチラシからアクセスしたことが分かるようなパラメータをつけてください。
気軽に応募できるように、チラシの裏面を履歴書用紙にしてはどうですか?
→チラシの裏面を履歴書用紙にしてください。しかし応募の動機などは不要です。必要項目以外は、勤務可能時間など、働き方の希望アンケートのようにしてください。写真は面接時に撮影するのでスペースだけ確保しておいてください。
→履歴書用紙に記載する内容を作成する。表面は裏写りしにくいように「シアン1色刷」にする。
「履歴書用紙」に記載する項目
写真を貼る場所、氏名、生年月日、年齢、住所、電話番号、性別、学歴、職歴、資格、勤務可能な曜日、勤務可能な時間帯、交通手段、働き方の希望、自由記入欄
細かい記載内容はこちらで考えて提案することにします。「気軽に応募してほしい」という要望に添えるような内容にします。
「その他
目に留まりやすくするため、下記の文章を追加します。しかしスペースが足りなくなったら省きます。
- 副業・Wワーク歓迎
- 柔軟シフトで無理なく働けます
- 副業にも最適です
- 安定した仕事を探している方にぴったりです
- 頑張りに応じて時給アップのチャンス
- リラックスできる休憩スペースあり
- お気軽にご応募ください
レイアウトを決める
内容がだいたい分かったので作っていきましょう。
B5サイズにしては情報量が多いです。読みにくくならないように、整理された紙面を作りましょう。しかしそうすると、要望に反して多少「堅苦しさ」を感じるかもしれません。どうしても堅苦しさを減らしたい場合は、掲載内容を減らすように申し入れましょう。
以下のことを考慮して、レイアウトを決めます。
記載の順序
上から順に読んでいくと想定して、記載順を決めます。
読む人には「1.何のチラシ?」→「2.どんな仕事?」→「3.時給は?」→「4.待遇は?」→「5.応募方法は?」というような興味の連続が発生すると想像されますので、その順で記載していくことにします。
記載するサイズ
読む人に重要な内容を大きく、そうでもないものは小さく記載します。
「何のチラシか」「仕事内容」「時給」「待遇の利点」「応募方法」などが重要だと想定します。小さい文字は、募集に意欲のある人に読んでもらえれば良いでしょう。
履歴書用紙
本物の履歴書用紙を参考にします。しかし今回はサイズがB5です。実際の履歴書用紙はA3かB4サイズですから、その半分以下のスペースしかありません。効率よく、しかも書きやすいように配置していきます。
- プロフィール欄は削減しにくいが、数字を記入する項目は幅が狭くても大丈夫。
- 学歴・職歴・資格の欄は2行ずつにする
- 勤務可能曜日・交通手段・働き方の希望は、記入しやすいように選択式。各項目に自由記入欄も設ける。
レイアウト
今回は下記のようになりました。
レイアウトができたら、一旦プリントアウトして確認します。画面では気付きにくい違和感があるかもしれません。文字のサイズも、小さ過ぎないか確認しましょう。
【おもて面】
「記載の順序」「記載するサイズ」で決めた通りに配置していきます。
その他の項目は、不自然にならないように入れ込みます。
【うら面】
デザイン的には一般的な履歴書用紙に近いものにします。
そこで「追加1」を追加して体裁を似せました。
「追加2」は、普通の履歴書として他社への面接で利用されないようにするために社名を追加しました。そのような使い方をされても困らないかもしれませんが、提出された先の会社の人は混乱しそうです。
「追加3」は、バインダー用の二穴を開けるための中心位置です。綴じやすいよう左側の余白を多くとっています。
作り込んで行く
おもて面はチラシらしくなるよう、うら面は履歴書らしくなるよう、見た目を整えていきます。
【おもて面】
- 掲載内容が多いので、フォントをコロコロ変えると読みにくくなります。2〜3種類に収めることにします。また
- レイアウト時の印象として「4.待遇は?」の区画はゴチャゴチャしていて読みにくいです。見やすくなるよう工夫します。
- 堅苦しさを緩和するためにイラストを掲載しようと思います。「3.時給は?」「5.応募方法は?」のところが若干空いているようですので、やわらかめのイラストを探して入れましょう。
- URLは「https://web-press.jp/job」ですが、QRコードは、パラメータをつけて「https://web-press.jp/job?utm_id=flyer01&utm_source=qrcode&utm_medium=flyer&utm_campaign=20250601-flyer」とします。このQRコードからアクセスすると「flyer01 というIDのチラシ」「QRコードからのアクセス」「チラシという媒体を通じてアクセスがあった」「2025年6月1日配布のチラシキャンペーン」ということが分かります。必要なパラメータは、計測の方針によって異なります。ウェブの担当者に確認してもらいましょう。
【うら面】
本物の履歴書をよく確認して、それらしく仕上げます。シンプルに、体裁を全力で整えると履歴書らしさが出ます。
- 罫線の太さは、内罫と外罫で統一しましょう。
- 各項目ごとの余白、罫線と文字の余白なども統一します。
- 行の幅を統一します。氏名の欄と住所の欄は大きめにしておきます。
- 「働き方の希望」に記載する項目については、「シフトに関わるもの」「働き方について」をなるべく幅広く提示します。後から変更するのは簡単なので「一旦見てもらう」という精度で構わないでしょう。
以上を考慮して作成したものです。
こう見ると少し堅苦しいようにも思いますが、記載する内容が多いと読みやすさを確保するために堅苦しい印象になりがちです。
記載する内容を削って、少し柔らかい印象にしたものも作りました。
デザインはほぼ同じですが、少し気軽な感じになったかと思います。そのかわり情報量は減ってしまったので、詳しく知りたい人は「ウェブサイトにアクセスして確認する」という手間が増えました。情報量と気軽さはトレードオフになります。「気軽で親しみやすいのに情報が多いチラシ」というのは成立しにくいです。
まとめ
工場の求人チラシを例に、情報が多くても読みやすく見せるためのデザイン手法を紹介しました。
レイアウトでは、重要な情報を大きく、それ以外は小さく配置し、読み手の関心に応じて自然に情報を取捨選択できる構成にしています。裏面の履歴書も、限られたB5サイズの中で書きやすさと情報量の両立を図りました。
情報量と気軽さは両立しづらく、どちらを優先するかでデザインが変わります。今回は、必要な情報を整理しつつも、できる限り親しみやすさを損なわないデザインを目指しました。
適切なデザインは案件ごとに違います。依頼主の要望や意向を十分に考慮して作成しましょう。