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テーマ:各国の印刷物の歴史【全3話】
【03】ヨーロッパの印刷の歴史について
一般的に世界最古の印刷はおよそ3000年前に中国で発祥したという説が有力です。
それは【割符】と呼ばれるもので、竹に書いた文章を二つに割って契約者同士で持ち、お互いの竹がピッタリ合えば正式な書類である、という印刷というよりは、公文書の偽造防止策といった感じでした。
やがて紙が発明されるとほぼ時を同じくして粘土板を彫って作るハンコも発明されました。ハンコは全く同じ図柄を紙に量産できます。これが印刷の始まりと考えるべきでしょう。
現在の印刷の始祖となったグーテンベルグの活版印刷
ヨーロッパでは紀元前6世紀にはすでに本が流通していました。中国や日本では仏教の普及のために本が流通しましたが、この頃のヨーロッパは哲学の本や化学の本といった、学問書が主流でした。
この時代にすでに本は人々の間で身近な存在でしたが、中国で発明されたハンコのようなものでの印刷だったり、手書きの写しだったりで、まだ本格的な印刷技術はありません。
長い年月を経てヨーロッパ全体の文化が成熟し、大きな戦争も減り、人々の暮らしも少しずつですが安定していくと、市民の間でも貿易や産業などの商業が盛んになります。
すると読み書きの需要が高まります。これがおよそ15世紀初頭のことです。
そして1450年にドイツの金細工師であったグーテンベルグという人物が画期的な印刷技術を発明します。グーテンベルグは活字と活版印刷を考案し発明しました。
これが現在の印刷技術の直接的な始まりであるという説が有力であり、グーテンベルグが印刷の父であるという認識が一般的です。
グーテンベルグの印刷革命によりヨーロッパは空前の発展を遂げる
それまで本の増刷はほとんどが手書きの写しや、手書きの本のページをまるごとハンコで押すような印刷だったのに比べ、グーテンベルグが発明した活版印刷技術はまさに印刷革命でした。
グーテンベルグの発明は、連続使用に耐える丈夫な金属版の活字の他に、画期的な印刷機の発明でした。
活字版の発明により、文章を活字で作れるため、本の元版が無くても写しの本があればそのコピーが作れるようになりました。
これは例えるなら、もしハンコが無ければ当然判はつけません。しかし判をついた紙があればその判の文字情報はわかるために同じ内容のハンコを作ることが出来るようになった、という話です。
グーテンベルグが発明した印刷機は、活字を組んだ金属の版を紙にハンコのように押し付ける装置、といった感じで、二人がかりで使う機械だったそうです。
中国の漢字と比べてヨーロッパの文字はアルファベットように総数が少ないため何度も使える活字の版を運用するのに適していたといえます。
グーテンベルグの発明した印刷技術によって本が大量生産出来るようになり、値段は下がって一般市民にも手に入りやすい存在となりました。そのためこの時代にヨーロッパ全体の識字率は急速に上がりました。
この事は、その後に到来するルネッサンス時代というヨーロッパ全体で文芸文化が花開く時代の大きな原動力となりました。
例えばルネッサンス時代の大きな改革として挙げられる【宗教改革】は、ドイツの宗教家であるマルチン・ルターが自分の思想をどんどん本にして出版し、当時の印刷の力で早く正確に欧州全体に情報を伝えることが出来たからこそ成し得たといえます。
ヨーロッパはルネッサンス時代の目覚ましい文化の発展でその後世界を席巻する強大の国家勢力圏となりました。グーテンベルグの印刷革命は近世ヨーロッパの大躍進を陰で支えた存在といえます。